こっとう史音
知るほどにそばに置きたい、贅沢な日常がお待ちかね。
江戸中期から昭和初期頃までの骨董品や生活雑貨を扱う。
ふらりと立ち寄った店で、たまたま出会った食器に引き寄せられるように魅了されていく。30平方メートルほどのこぢんまりとした「史音」の店内には、江戸時代中期から後期、幕末くらいまでの100年以上の時間が過ぎた骨董品や、昭和初期頃までの生活雑器も数多く並んでいる。
中でも、あかりの下でグリーンや黄色の美しい光を放つウランガラスの小物入れや、かき氷など夏の生活シーンに似合いそうな食器類などは眺めているだけでも美しい。ウランガラスは1830年頃にボヘミアで作られ、フランス各地に広がったガラスで、日本ではほとんどが日常生活の中で使われてきた。ある有名ミュージシャンがコレクターとして知られ、稀少な価値とともに長く愛されている。
店の奥の棚には、塗り物の碗や膳、蕎麦猪口などの陶器があり、蕎麦猪口は伊万里の絵付けによる図柄のおもしさをたっぷり味わえる。「塗り物は蒔絵で、景色は後の世に使い手によって水滴が付くのを計算して描いているんですよ。陶器に牡丹の絵柄が多いのは、昔から、世界で一番綺麗な花といわれてきたから。一方唐獅子は、一番強い動物とされていたので、今も残っている模様には獅子が多いの」と店主の井川幹子さん。井川さんの説明を聞いていると、一つ一つが立ち上がってくるようで楽しくなってしまう。30~70代の女性客が多く、3,000円台の向付などリーズナブルな価格で、お気に入りが手に入るのもうれしい。
暮らしの中で磨かれたユーモラスなセンスとともに。
井川幹子さんと夫の雅雄さんは、時間があると中四国地方、特に倉敷や岡山、松山などへ出向いて店へ置く品々を仕入れている。「平成7年にこの場所にオープン。母が茶道をしていた関係で、特に骨董の知識はないまま始めましたが、やってみるとおもしろいですよ」と幹子さん。そう言いながら手に取ったのは近江百景が描かれた九谷焼きの茶漬け茶碗。広重の浮世絵で知られる近江の景色を、茶漬け茶碗でちょっと不思議だったが、生活雑器としてみると、この気取らない感覚がなんとも贅沢。ご夫婦ともに気さくな人柄で、気軽に入れる雰囲気も人気の理由。一度行ったら、なかなか席を立ちがたい店だ。
「史音」では年に2度、テーブルコーティネーターと、店の食器類を使って日常の食卓をアレンジし楽しむイベントを行っている。
私のおすすめうらぶくろ!
ご近所が店番がわりも親しみやすい街・うらぶくろ。
できれば店は、一日中開けておきたい。「でもお客さんはいつ来られるかわからないし」と井川さん。その声が聞こえたかどうか、昼休憩などで店を留守にするときには、近所の雑貨屋や喫茶店の女子たちに声をかけておくと「史音さーん、お客さんよー」と呼んでくれる。この親しみやすさはうらぶくろならでは。日々のあいさつはもちろん、感謝の輪も年々広がっていく。
※骨董品の買取も行っている。