𠮷鮨
江戸前の丁寧な技から生まれる、最高峰の鮨に舌鼓。
一つとして、マニュアルはない。その日、その時のベストな仕込みで昇華させる。
暖簾をくぐると、凛と澄んだ空気が迎えてくれる。24年目を迎える通常8席のカウンターのみの「𠮷鮨」では、東京で腕を磨いた店主の吉村さんが江戸前の丁寧な職人技を披露してくれる。こだわりは、魚介類の仕入れからはじまる。「お客様と出会う前に、魚との出会いがあります。季節はもちろん、天候によっても魚の状態は様々。その日の状況を自分の目で確かめ仕入れをすることが、お客様との会話にもつながります」と、吉村さん。その日出会った魚介類の状態に合わせて、まるで会話をするように仕込みがはじまる。魚介類があがったときの潮や場所、時間によって、仕込みの方向性を決めていく。マニュアルは、一つとしてない。同じ魚であっても、時季によって脂ののり方は異なる。それを一年通して味わうことで、魚の流れを知ることができるのも鮨の楽しみだと吉村さんは語る。
シャリは熟成した赤酢を使用し、ほんのりとピンクがかった米が、鮨の美しさをより一層引き立てるようだ。本来は砂糖を使用するところを、「𠮷鮨」では塩を加えて米の甘味を引き出している。海の中で育った魚を扱うのであれば、米の力も塩で引き出す、という考えを大切にしているのだ。その土地、その季節にしか味わえない鮨の奥深い世界を味わいたい。
日本全国どこを探してもここでしか味わえない、「𠮷鮨」オンリーワン。
身がギュッとしまった瀬戸内のチダイを塩と酢で柔らかく仕上げ、自家製のおぼろと柚を添えて風味をプラスした一貫は、日本どこを探しても「𠮷鮨」でしか味わえない。「江戸前の仕込みをしたチダイと、アクセントのおぼろや柚、ワサビ、海苔、赤酢のシャリで一体化したハーモニーを堪能してもらいたい。ここで初めて食べたと言ってもらえることが喜びです」と、吉村さん。急激な刺激に弱いアワビは6時間ゆっくりと時間をかけて蒸すことで、ふわふわとした食感に。ごまかしがきかないからこそ、職人の技と経験が試される。甘エビは殻と身の間の旨味を立たせるために、北海道産の昆布を使って締め、特有のねっとりとした食感を引き出す。また、ナマコは2~3週間前から酒でボイルをして仕込みをしている。今日仕込んで出るものもあれば、ずっと前から仕込んでいるものも。丁寧かつ繊細な江戸前の技法の工程を経て、口に運ばれるその日を待っている。そういう物語を想像しながら食べるのも、鮨の楽しみ方の一つかもしれない。
個々の力を、うらぶくろの飛躍へ。
うらぶくろには和洋折衷を取り入れた、様々なお店やものがある。「個々の成長がチームの成長になるように、個々のお店の力がうらぶくろの飛躍につながると思います。例えば、お店同士でコラボレーションするのもおもしろいかもしれません。あの店へ行こう、うらぶくろへ行こう。そういう未来になることを期待しています」と、吉村さん。